市立札幌藻岩高校~出張講義2025


2025年7月16日、市立札幌藻岩高校にて、前年に続く「医療職体験プログラム」を実施しました。前回(2024年9月)は看護・助産志望者に絞った回でしたが、担当教員からいただいた**「全生徒に受けさせたい」という要望を受け、2025年は対象を広げた構成**へと組み直しました。1〜3年生の女子生徒たちが集まり、体験の5段階評価と6つの自由記述でアンケートを取った回です。

全体験が「5(楽しい)」に振り切れた

5段階評価(1=楽しくない〜5=楽しい)で聞いた体験の満足度は、ほぼすべての生徒が全5項目(妊娠検査薬・妊婦体験ベスト・注射針の挿入・分娩シミュレータ・新生児蘇生)に「5」を付ける結果でした。「楽しい」という評価が、単に笑える・面白いというニュアンスではなく、自分の将来に触れる種類の体験だったという意味で書かれているのが、自由記述から伝わってきます。

「寸劇のような」分娩シミュレータ

この日の分娩シミュレータは、玉城先生と私(馬詰)の二人で担当しました。対話形式で進めた分娩の実演が、ある生徒の目には**「寸劇」**と映っていたのが印象的です。

「2人の先生が見せてくれた分娩シミュレータが寸劇のような感じで面白く印象に残っています」(2年・女)

「分娩シミュレーターで赤ちゃんの頭が出た後の体を回す動作が力強くて、赤ちゃんの首とかいたいか驚きだった」(1年・女)

笑いを交えながら進める分娩の実演は、緊張感の高いテーマを構え直すための装置として働いています。「怖い」が先立つ生徒に、一段階置いてから本物の映像に入る段差をつくる意味が、この寸劇的な演出にはありました。

「やわらかいイメージ」への書き換え

医療職のイメージが変わったと書いてくれた生徒は、多くが「チーム」という言葉に触れていました。

「もっときっちり全部自分でやらないといけないみたいなこわいイメージがあったけど、チームで協力して看護師さんのことも考えてやる、みたいなやわらかいイメージに変わった」(1年・女)

「医療職はすごいそがしくて大変なんだと思っていたが、大変な分すごくやりがいがあって、元気をもらえる仕事でもあるんだと感じた」(3年・女)

「ひとりで全部背負う」から「チームで役割を分ける」へ。この書き換えは、進路を医療職に絞り込みきれていない生徒に安心感を届けるものでもありました。

「帝王切開は立派な出産」

2025年の藻岩アンケートで特徴的だったのは、帝王切開という出産方法を自分事として書いた生徒の多さです。

「私はたいばんに定着する位置が下の方で、2,3月に産まれる予定が1月に帝王切開で産まれ、へその緒が巻きついて、しばらくは保育器の中で生きていたと聞いていました。何かのとき、みなさきの勢力のおかげでここまで大きくなれました。本当にありがとうございました」(1年・女)

「帝王切開は立派な出産、という考えがもっと広まってほしい」(1年・女)

「痛い思いをして産んだのが凄いという風潮を、どんな出産方法でも出産はすごいものだという考えに変えていきたいです」(1年・女)

**「自然分娩こそが本物」**という素朴な二分法を、生徒自身が自分の言葉で解体していく動きが、藻岩2024から2025へと引き継がれていました。

貧血と「妊娠できるか不安」

3年生の感想のなかで、最も踏み込んだものの一つがこれでした。

「自分自身、貧血気味ということもあって、頑張って食事やサプリなどで改善を試みていますが、普通妊娠はできない可能性が高いように勝手に思っています。今回、先生のお話を聞いて… どんな方法で子供を産んだとしても産んだことに変わりはなく、そういう風な思いを抱えてきているお母さんを自分が支えてあげたいという気持ちが強くなりました」(3年・女)

「自分は普通に妊娠できないかもしれない」という3年生が一人で抱えてきた不安が、講義のなかで**「どんな方法でも産んだことに変わりはない」という視野の広がりを経由して、「そういう不安を持つ人を支える側になりたい」**という進路意志へと繋がっていく。プレコンセプションケアが届けうる最良の筋道の一つが、このアンケート一枚に収まっていました。

「自分も11年前は」

年齢でいえば11歳の差でしかないはずの「自分の出生」を、講義の映像を通じて立体的に捉え直した生徒もいました。

「動画で受精卵になる瞬間を見たり、実際の帝王切開の様子を見たりして、より妊娠・分娩が神秘的なものだと感じることができました。自分も11年前は動画で見た赤ちゃんと同じ道をたどっていたので、改めて自分を産んでくれた親に感謝しなければならないと感じました」(2年・女)

「11年前の自分」と「今日観た映像の赤ちゃん」が重なる感覚は、中高生という年齢でしか成立しない時間軸の近さがありました。

対象を広げた意味

2024年の教員感想にあった「全生徒に」という要望を受けて広げた2025年の回は、進路志向のばらつきが大きい分、アンケートに現れる言葉の幅も広くなりました。看護・助産を志望する生徒の深まりと、進路を絞りきれていない生徒の気づき──両方が同じ紙の上に並んでいる状態は、1回の講義の到達点としては十分に手応えのあるものでした。