市立札幌旭丘高校~出張講義
2025年1月30日、市立札幌旭丘高校にて、出張講義「妊娠と出産、医療現場の現実を知る」を実施しました。大雪のなか資材を搬入する大変な出発となりましたが、最後にいただいた手書きアンケートを読み返すと、準備の苦労が癒やされました。
母校で、卒業生が語るということ
今回は試みとして、この高校の卒業生である医師や看護師が、自らのキャリアを紹介してくれました。「自分が座っていたのと同じ教室で、同じ校舎の空気を吸いながら、今の生き方を語る」という構図は、講義する側にも特別な重みがあります。分娩シミュレータは、玉城先生とともに担当し、笑いを交えながら進行しました。

帝王切開という経験を、自分のこととして
アンケートを読み返して印象に残ったのは、自分自身が帝王切開で生まれたという生徒たちの声が複数あったことです。
「私と姉はどちらも帝王切開で生まれてきました。以前話を聞いた時には、自然分娩も経験してみたかったけど、家族のことで考えてあきらめたと母が言っていました。自分が生まれた時のことを、さらに知りたいと思いました」
「自分も帝王切開で産まれたので、その時のことを母から聞くことがよくあったのですが、初産での帝王切開へのイメージは自分が感じていたことと少し違ったので、今後、そのイメージが変わっていけるように、自分にも何かできることがあるか考えたいと思いました」
帝王切開は日本ではおよそ4人に1人の妊婦が経験する分娩方法でありながら、「良い出産ではない」という誤ったイメージがいまだに残っています。その誤解を、自分自身の出自と重ねて引き受け直し、**「自分にも何かできることがあるか」**という次の行動へと繋げようとしている生徒がいたことが、大きな励みになりました。
「大変」から「かっこいい」へ
医療職への印象の変化を書いてくれた生徒の多くが、「大変そう」というイメージから別の言葉へと書き換わる瞬間を報告してくれました。
「医療職は大変な仕事だというイメージが強かったけれど、今日の講義に参加して、かっこいいという印象が生まれました。責任はもちろんあるけれど、やりがいも十分あるんだと実感しました」
「以前までは看護師を目指していたのですが、助産師は大学で自分にはできないと思ってあきらめていました。でも助産師だけのやりがいや、色々な人たちが協力して出産が行われているのを知って、自分も目指してみたいと感じました」
「大変」という一語で閉じていた医療職のイメージが、チーム医療の内側を一度覗いたことで「かっこいい」「やりがい」という別の輪郭に書き換わる。生徒自身の将来像の物語が書き換わっていく瞬間を、アンケート用紙越しに見ているような感覚がありました。

超緊急帝王切開の映像が残したもの
講義の後半でお見せする緊急帝王切開の映像は、生徒たちに強い印象を残したテーマの一つでした。
「最後の緊急で帝王切開する動画で、子と母の命を守るために多くの人が必死になっているのがすごいなと思った」
「緊急帝王切開に何十人もの人たちが、焦る気持ちを抑えながらやっているところを見てすごく驚いた。色んな役割があって成り立っているんだと感心した」
医療ドラマでは描かれにくい「焦りを抑えながら、それぞれの役割を静かに果たす」現場の質感が、映像を通じて伝わったようでした。

感謝と、「これから自分が何をするか」
多くの生徒が書いていたのは、両親への感謝でした。ただその感謝は「ありがとう」で閉じているのではなく、**「次に自分が何をするか」**という行動への橋渡しとして書かれているのが印象的でした。
「母が必死になって痛めて産んでくれた命を、自分も母になってつなげたいと思いました」
「命の誕生は当たり前ではないということを改めて感じた。そしてさらに、自分も看護師や助産師になって医療の場で人の手助けをしたいという思いが強くなった」
講義の目的は「正しい知識という『種』を届ける」ことでしたが、その種は生徒たちのなかで既に、次の世代へ受け渡す準備を始めていました。大雪のなかでの搬入から始まった一日は、手書きのアンケートによって静かに報われた半日でした。