市立札幌開成中等教育学校~出張講義2024
2024年7月17日、市立札幌開成中等教育学校にて、出張講義「妊娠と出産、医療現場の現実を知る」を実施しました。受講者は中1から高3まで混成、40名(97%が女子)。中等教育学校という学校種ならではの、学年差が最も大きい回でした。
NHKが取材に入った日
この日の講義は、NHK北海道の取材対象でもありました。テレビ映像としてのニュース化は開成2024が初めてで、参加した生徒の「将来は看護師になりたいと思っていたが、産婦人科で働くことにも興味がわいた」というコメントも紹介されました。
体験メニューを広げた回
開成2024は、他校よりも体験メニューが多彩な構成で行いました。分娩シミュレータ・妊婦体験ベスト・妊娠検査薬に加えて、注射針の挿入、そして新生児蘇生の手技体験まで組み込まれています。
アンケートの「楽しかった体験」では、注射針の挿入(24名)と分娩シミュレータ(23名)が同率で人気でした。中学生が多い回だったこともあり、「手を動かせる体験」そのものへの純粋な驚きが強く出ていました。
「点滴は針がささっているのではなく、シリコンがささっているということ」(中1・女)
「分娩シミュレータで赤ちゃんの体を押してみても全然体から出なかったこと」(中3・女)
「ドラマで観ていたのとは違う」
もっとも印象に残った体験として、多くの生徒が挙げたのは超緊急帝王切開の映像でした。
「最後に見せていただいた超緊急帝王切開の動画がとても印象深かったです。実際に1人の患者さんに対して数多くの人がチームとして関わっている様子、内側の様子を見ることができる場は多くないので、貴重な経験でした」(高3・女)
「手術って5,6人でするものだと思ってたら、部屋が埋まるくらい人がいて意外だった。チーム医療って言葉があるけど、本当に医療現場はチームなんだと実感した」(高3・女)
「医療ドラマでは1人の医師が主役」──そのイメージが、「部屋が埋まるくらい人がいる」というスケール感に書き換わっていく。中高生の学年幅を越えて、この気づきはほぼ全員の感想に顔を出していました。
「医師が一番偉い」が壊れる
中学生の感想で印象的だったのは、講義前に抱いていた医療職ヒエラルキーの崩れ方を、はっきり言語化している生徒が多かったことです。
「講義前は医師が1番偉いという偏見を抱いているところがあったが、講義を受けて医療にはどの医療職も必要不可欠だと学べた」(中3・女)
「医療職は、自分の得意なことをすること。→少人数で、1人に命がかかっている・・・!!ではないことを知った」(中3・女)
「自分は手先が器用ではないので、『それぞれが得意なことをすれば良い』という、言葉に励まされました」(高3・女)
医師志望の生徒が「手先が器用でなくても医療に入れる」と安心する──進路を考え始める中学3年生や高校1年生にとって、この一言の効果は、数値化できない形で進路選択に効いていくのだと思います。

自分の出生を、立体的に捉え直す
当事者性の強い感想も複数ありました。
「私自身は母に北大病院で帝王切開で産んでもらったので、家に帰ったら母に改めて感謝の気持ちを伝えようと思いました」(高3・女)
「わたし自身が双子で生まれてきて、今はとても元気だけど生まれてすぐはICUに入ったくらい危ない状態だったし、妊娠も2人分いたから私のお母さんは本当にすごいと思いなおしました」(高3・女)
「私も妹も2000g前後で生まれて、未熟児で内臓も危ないところがあってICUに入ったりしたと話では聞いていたけど、それって本当に色んな人にお世話になっていたんだなと思いました」(高3・女)
「自分が生まれた時のこと」を、言葉としては聞いて知っている。それを講義という触媒を通して、医療現場の質感と一緒に立体的に捉え直す──この動きは、後の札幌南2024・2025でも何度も見ることになります。
「コウノトリ」を思い出した生徒
開成2024で一つだけ、他校ではあまり出てこなかった感想がありました。
「たくさんの器具をもって来て下さってありがとうございました。私は「コウノトリ」を見て興味を持ちました。すごく感動的です。どこまでがリアルなのかと考えたら分からないですが、自分が結婚したとき、母親になるかくごがあるのか、考えさせられました」(中3・女)
医療ドラマが「どこまでリアルか分からない」という宙吊りの状態にあった生徒が、本物の現場映像を見ることで、ドラマの輪郭を検証する。ドラマ世代の中学生ならではの受け取り方として、記憶に残った一枚でした。
テレビに映ることの意味
開成2024は、出張講義が新聞からテレビへと広がった節目の回です。新聞の活字が届ける層と、夕方のニュース映像が届ける層は、重なりながらも少し違います。保護者世代・地域住民・教育関係者といった層に対して、テレビ映像という別の経路が一つ加わった──この日のNHK取材は、そうした広がりの一歩として記憶に残った回でした。