市立札幌藻岩高校~出張講義2024
2024年9月11日、市立札幌藻岩高校にて、出張講義「医療職体験プログラム」を実施しました。受講者は看護系進学を希望する1〜3年生。他校の全学年混成とは違い、進路の方向性をすでに絞り込んだ生徒たちが集まっていた点が、この回の最大の特徴でした。
「希望者」相手だからこそ出てくる言葉
看護・助産を志望している生徒たちが相手だと、アンケートの言葉は**「知る」から「もっとなりたい」へ**傾きます。
「私は将来、助産師になりたいと思っていたのですが、講義を受けて、より助産師になりたいという気持ちが大きくなりました」(3年・女)
「日頃、患者さんの側にいる看護師さんと助産師さんは、心の支えとなる存在だと感じたので、私も患者さんを安心させられる温かみのある助産師になりたいと思いました」(3年・女)
「看護師志望だったけど助産師もいいなと思った」(1年・女)
3年生の看護志望者が「助産師もいいな」と書くような、進路の微細な位置づけ直しが、この日のアンケートには何度も出ていました。進路決定の「精度」が一段上がる──希望者相手の講義が持ちうる固有の効能です。
家族にNICU看護師がいる
特に印象的だったのは、身内に医療職がいる生徒たちの言葉でした。
「お姉ちゃんがNICUの看護師で身近にいるからこそ、さらにこの講義を深められました」(1年・女)
「看護師は老人看護、小児看護のイメージが強かったので、NICUの存在を初めて知り、新生児のサポートにも看護師が必要なことを学ぶことができました。家でもっとNICUについて調べて、将来の職への幅を広げたいと思います」(2年・女)
知っているつもりだった姉の仕事の中身を、外部講師の講義を通じて捉え直す。家庭で日常的に聞ける話だからこそ、かえって解像度が上がらないまま通り過ぎていた──その死角を、この日の講義が埋めた感触があります。

超緊急帝王切開が残したもの
他校と同様、最後に見せる超緊急帝王切開の映像は、ここでもアンケートで最多の言及でした。
「超緊急帝王切開の時の動画を見せてもらった時に、病院にいる看護師さんや医者など全員が一致団結して一人の妊婦さんのことを助けていたところが感動しました」(3年・女)
「帝王切開で赤ちゃんを産む妊婦さんが増えていること/妊婦さんが陣痛とたたかっているように、看護師さん、助産師さん、医師や輸血部の人など多くの人が闘いながら一緒にたたかっていること」(3年・女)
「陣痛とたたかう妊婦」と「それに並走して闘う医療チーム」を同じ地平の出来事として書くようになった生徒の感想は、看護志望者ならではの視点でした。
教員自身のアンケートが届いた日
藻岩2024の特筆すべきこととして、担当教員もアンケートを書いてくれたことがあります。しかも、その内容が、自分自身の出産体験を振り返るほど踏み込んだものでした。
「『妊娠・出産は命がけ』と聞いていましたが、みんな出産してるし大丈夫だろうと正直楽観的な気持ちでいました。実際に経験すると、緊急で救急車で運ばれ、1ヶ月入院、NICU、GCU、MFICUにもお世話になりました。何が起こるかわからない本当に命がけと痛感せられたと共に、これまで病院にほとんどお世話になったことがなかったので、医師・看護師・助産師の仕事や人の温かさに触れ、こんなにも人のため、社会のため、尊い仕事であり、魅力的な仕事であることを感じました」
この教員は、講義を生徒向けの情報としてだけでなく、自分自身がまだ消化しきれていなかった出産体験の整理材料としても受け取ってくれたのだと思います。もう一言、重要な要望もありました。
「今回は看護希望の生徒でしたが、全生徒(男子生徒も含め)このような授業を受けさせたい!と思いました」
希望者限定から、全生徒対象へ──この問いかけは、翌2025年の藻岩での実施設計に直接つながっていきました。

妊婦体験の身体感覚
もう一つ、他校と共通の感想も残しておきます。
「妊婦体験ベストを着て、自分の母親もこんな大変な思いで産んでくれたことを気づいて、感謝したいと思いました」(3年・女)
「妊婦体験をしてみて、今の体は自分だけの体ですけど、妊娠したら新しい命の重みがすごいのだろうなと感じました」(3年・女)
**「自分だけの体ではなくなる」**という感覚の予期を、高校3年生の身体で一度シミュレートしておく。この数分間の体験が、数年後の実際の妊娠・出産時に思い出されるかもしれない──そう期待して、重りを背負ってもらった回でした。
「看護学部に入学しないと体験できないことを体験できた」
最後に、高校3年生の感想を一つ。
「看護学部に入学しないと体験できないようなルート確保することができたので、すごく貴重な体験ができてよかったです」(3年・女)
看護学部の授業の一部を、高校生のうちに先取りする──この「前倒し」こそが、藻岩2024という希望者限定回のコアでした。