市立札幌南高校~出張講義2024


2024年12月18日、市立札幌南定時制高校にて、出張講義「妊娠と出産、医療現場の現実を知る」を実施しました。受講者は3年生。定時制という学校種は、全日制とは異なる時間の流れの中で学び続けてきた生徒たちの集まりです。働きながら通っている生徒、編入を経て辿り着いた生徒──それぞれの個別の背景を抱えながら、同じ教室で半日を過ごしてもらった回でした。同じ高校で2025年にも定時制で実施することになるので、この日は札幌南定時制での第一回目として記憶されています。

「思っていたよりリアルだった」

アンケートで最も多く名前が挙がったのは、やはり分娩シミュレータでした。

「分娩シミュレーターです。思っていたよりも赤ちゃんの重さや感触がリアルでした」

「お母さんはとんでもない痛みを経験して産んだのだ」

3年生は知識として「出産は大変」と知っているはずの年齢です。それでも、赤ちゃんの模型を手で受け取ったときの重さと温度感が、言葉の知識を一段階深いところへ落とすきっかけになる──そんな感想が繰り返し出てきました。特に、定時制の3年生は、全日制の同学年の生徒よりも一段社会に近い生活を送っている分、「体で感じる情報」を受け取る粒度も細やかだったように思います。

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医療現場は「大勢で動く」

この日、男子生徒の声が多かったのも特徴でした。そのなかに、医療ドラマのイメージを書き換えていく感想がいくつもありました。

「最後に書いて通り、ドラマなどでは1人が取り上げているが、実際だと大勢で1人の赤ちゃんをとり出すのだと知った。前までは嫌だったが、この気に考えを改めたいと思う」

「帝王切開をするとき、医師や看護師さんも焦り、小さなミスを起こしてしまうということが分かりました」

「医師は焦らず冷静」というドラマ的な理想像ではなく、焦りを抱えながら、それでもチームで役割を果たすというリアルな像が、3年生の男子の言葉で残されていたのは印象的でした。「前までは嫌だったが、考えを改めたい」という一文が添えられていたことに、特に手応えを感じた一枚でした。医療という分野に対する距離感が、この数時間で一段縮まった生徒が、確かにこの教室にいた──そう書き残しておきたい回でした。

母の身体を、数字の外側で感じる

家族への言及も複数ありました。

「母は注射もニガテなほど痛みに弱いはずなのに、なぜ5人も産めたのだろうかと少し怖くなりました」

「新しい命を生むというのはお母さんにとっても、医療現場の人にとっても、文字通り命がけなのだ」

「母は強い」という一般論ではなく、自分の母の個別の弱さと、それでも産んだという事実の落差を、怖さという言葉で書いてくれた生徒がいました。講義が狙った「当事者性」が、想定以上に深いところまで届いていたのかもしれません。5人を産んだ母親の個別の身体を、家族のなかで一番よく知っているのは、他ならぬこの生徒自身です。「凄い」ではなく「怖い」という言葉が選ばれたところに、知識ではなく実感として出産の重さを受け取ったことの証が残っていました。

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札幌南定時制との関わりの始まり

札幌南定時制高校2024は、翌2025年の同校での実施へと続いていきます。定時制というコンテクストで受講する3年生の層がどんな言葉を書いてくれるのか、その最初の手応えを受け取ったのがこの2024年12月18日でした。全日制向けの講義をそのまま持ち込むのではなく、定時制の生徒たち固有の背景を前提にして講義を組み直していく──その必要性と可能性の両方を、この回の1枚1枚のアンケートが私に教えてくれました。