札幌月寒高校~出張講義


2023年12月12日、札幌市豊平区の札幌月寒高校にて、出張講義「妊娠と出産、医療現場の現実を知る」を実施しました。市内高校での開催としては3回目、事前・事後アンケートを備えた構成を初めて本格導入した回でもありました。受講を希望した1・2年生に、妊娠の仕組みから分娩シミュレータによる実体験、帝王切開の模型再現までを通した半日です。

新聞取材が入った日

この日の講義は、北海道新聞「くらし」面の取材対象でもありました。取材を受けた2年の助産師志望の生徒が、「緊張する状況で初めて妊娠検査薬を使う」のではなく「事前の知識があれば不安が和らぐ」と語ってくれたことが紙面に残っています。同じ視点はアンケート自由記述にも現れており──不安に直面してから学ぶのではなく、直面する前に学んでおくという、プレコンセプションケアの定義そのものを、生徒自身の言葉で表現してくれた場面でした。

妊娠・出産イメージの書き換え

月寒2023の事前・事後アンケートは選択肢形式の質問を対にする設計で、講義前後で「妊娠」「出産」のイメージがどう変わるかを直接測れるようにしていました。事前では「出産」のイメージとして「大変そう、つらそう」を選ぶ生徒が目立ちましたが、事後では「楽しそう、幸せそう」「身近なもの」へと動いた生徒が複数いました。

自由記述が、その動きを裏側から言語化してくれます。

「講師の方々がすごく楽しそうにシミュレーションを教えてくださったので、以前は出産をすることも、立ち会うことも少し怖いと思っていたのですが、その怖さがうすくなって将来のことも前向きに考えることが出来ました」

「今後、自分自身も妊娠、出産をする時が来るかもしれません。その際は自分自身だけでなく、赤ちゃんの健康も考えながら出産までの道のりを歩んでいけたらと思いました」

「大変そう」「怖い」が90分の講義で消えたわけではないのだと思います。ただ、それらの感情の隣に「前向き」「楽しそう」という選択肢がもう一つ並ぶようになった、というほうが近いかもしれません。

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シミュレータが運ぶもの

分娩シミュレータの体験は、この日の講義でも反響が大きいパートでした。

「出産のシミュレーションで膣の部分を開いてあげて頭を出やすくしたり、切れじを防ぐために指で押さえたり、気をつけることがとても多く驚きました。妊婦さんの重さを体験できる重りを実際に背負ったことで、どれほど大変なのかがよく分かったので、困っている妊婦さんがいたらぜひサポートしていきたいです」

「シミュレーションではすぐ生まれてきたけど、本当は10時間ぐらい、痛みに耐えなければいけないのかと、思うと、とても母に感謝しかないです」

「出産は大変だ」という通り一遍の知識が、手の感触・重りの重さ・時間感覚という身体経験に結び直される。その結び直しを経ると、「母への感謝」という一見よくある言葉が、一度分解されたうえで組み直されて出てくるのだと感じました。

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助産師志望という進路意識

事後アンケートで印象に残ったのは、助産師という職業を自分の将来の選択肢として書き込んだ生徒が複数いたことです。

「大学に行ってからしか教わらない胎児の取り出し方はすごく怖かったけど、命の誕生の偉大さは改めてすごいものだと感じることができました。将来、助産師になって多くの子どもの出産に立ち会いたいなと思いました」

「私は助産師になりたいと考えているので、大学に行く前にこのような体験が出来て良かったです」

大学に入ってから初めて胎児の取り出し方を学ぶのではなく、高校生のうちに一度手で触れ、重さを背負い、映像を見ておく。この「前倒し」は、進路の精度だけでなく志望の強度そのものを変えていきます。

外に開かれた回として

月寒2023の講義には、文部科学省関係者や他校教員の見学も入っていました。教育行政と教育現場の双方から、高校生向けプレコンセプションケアの実践を観察する機会として位置づけられていた回です。その後、出張講義は2024年以降の札幌南・JAL千歳・藻岩・開成へと広がっていきますが、その流れを作った基点のひとつが月寒2023でした。