パートナーの声にも胎児は反応する(ただし好みは母の声に寄る)


外来で「パートナーに話しかけてもらうと動くんです」という話をよく聞く。MarxとNagy(2015)の研究にはパートナーの声という条件が含まれていなかった。この点を検証した論文を紹介する。

Lee GYとKisilevsky BS(カナダ・トロント大学とクイーンズ大学)がDevelopmental Psychobiology 2014に報告した研究である。対象は妊娠37週以上の低リスク母児39ペア(新生児の検査は35例)。父親は事前の7日間、毎日1話(約3分)の児童書の一節を、母体の腹部を露出した状態で胎児に読み聞かせた。その後、研究室で、母親と父親がそれぞれ『Bambi』を3分間朗読した録音を、腹部から約10cm上のスピーカーで平均95 dB Aで流し、胎児心拍数と胎動を記録した。両親の声の順序は無作為に割り付け、間に20分の無音を挟んでいる。さらに出生後5日以内(平均1.6日)に、同じ録音を20秒に短縮した試行を繰り返し(約80 dB SPL)、新生児の頭部回旋(head-turning)でどちらの声を好むかを評価している。

反応はするが、好みは母に寄る

  • 在胎後期の胎児:母の声・父の声のどちらでも胎児心拍数が上昇し、3分の再生期間を通じて持続した。ANOVAでは2つの声への反応の大きさに有意差はつかなかった。
  • 胎動の回数・持続時間には、声の種類でも期間でも差がなかった
  • 新生児期:母の声に対しては、声の方向に頭を回す反応が有意に出た。父の声に対しては有意な方向性は出なかった。

胎児はパートナーの声にも生理的に反応するが、出生後に好む反応が出たのは母の声だけだった。なお、胎児期の「好み」は測っていない、と著者らは明記している。父の声への応答が観察されたのは、父が7日間毎日お腹に向けて読み聞かせ、しかも8割以上の父親が日常的に胎児に話しかけていた集団でのことである。日常の生活環境で届く父の声だけで同じ反応が出るかは別の問題で、Kisilevskyら(2009)では、こうした読み聞かせなしでは父の声の再生中に心拍応答は観察されなかった。

なぜ差がつくのか

著者らは、声を聞く量と伝わり方の違いで説明している。母親が話すたびに、その声は母体を通して胎児に届く。パートナーの声は環境音として、母親の衣服・組織・羊水を通り抜けて(子宮内での減衰は35〜40 dBと推定される)閾値以上で届かなければならない。しかも多くの夫婦は仕事で日中離れているため、父の声を聞く機会は母の声より少ない。男性の声は周波数が低く減衰しにくいので、周波数だけでは父の声への反応が小さめだったことは説明できない、とも著者らは書いている。新生児の好みは声を聞いた量に関係している可能性があり、母の声は胎児が最も頻繁に聞く声である、と著者らは考えている。

臨床で伝えたいこと

  • パートナーが妊婦のお腹に話しかけることには生理学的な意味がある。胎児は反応している
  • ただし、出生直後に頭を向けて好む反応が出たのは母の声だけだった。分娩室で最初に声をかけるのは母親がよい、と言える根拠になる
  • 反応の大小を気にせず、パートナーも話しかけを続けてよい

外来でパートナーから「話しかけても意味があるんですか」と聞かれたら、胎児は反応していると答えている。母の声のほうが頻繁に届くので、生まれてすぐ好むのは母の声だが、パートナーの声も生まれてから馴染んでいく。

参考文献
Lee GY, Kisilevsky BS. Fetuses respond to father's voice but prefer mother's voice after birth. Dev Psychobiol. 2014;56(1):1-11. doi:10.1002/dev.21084